Q.クリニックの今の状況は?(島津咲苗アナウンサー)
「半日で10~15人の患者さんを診察していますが、そのうちコロナ陽性は10人程度、年明けからはずっとそのような状態になっています」(髙田内科クリニック 髙田統男院長)
名古屋市中村区にある高田内科クリニックの髙田統男院長は、日本大学歯学部の今井健一教授らと共に、新型コロナウイルスの特性について研究を続けています。
Q.オミクロン株について、どんな研究を?
「従来株からデルタ株、オミクロン株と“感染爆発”というような状況まで増えてきたのはどうしてなのか?と。みんな感染防御の対策をしているはずなのに、どんどん拡大してしまうのはなぜか?というところを調べてみたわけです」
「人の唾液というのは、もともと液体成分と口の中の細胞がはがれた細胞成分からなっているのですが、そのうちの液体成分に溶け込んでいるウイルスの数が、デルタ株よりオミクロン株の方が飛躍的に増えていることを発見しました」(髙田統男院長)
研究グループは、2021年に流行したデルタ株の感染者や、オミクロン株の派生型「BA.1」」の感染者など、あわせて90人から唾液を採取。
Q.どういった方法で研究を?
「大変シンプルな方法で唾液の中のウイルスの量・数を数えました」(髙田統男院長)
感染者から飛沫として吐き出されるウイルスは、『唾液の細胞に付いたもの』と、単独で漂う『セルフリー』の2類。唾液の細胞に付いたウイルスは、吐き出された後、1mから2mの距離で落下します。
実験の結果、従来株やデルタ株は、唾液の細胞についたウイルスの割合が、セルフリーより高かったのですが、オミクロン株の場合は、単独で漂うウイルスの割合が高く、セルフリーの数はデルタ株の約3倍。つまり、オミクロン株はデルタ株などに比べ、空気中に長時間漂い、室内など密閉空間でエアロゾル感染を引き起こしやすい特徴がありました。これが、第7波や第8波の爆発的な感染拡大につながったと髙田院長は見ています。
Q.今回の研究結果から、今後の感染対策をどのようにしていけば?
「特に飲食店などでは、ついたてを用意している所が多いと思うが、エアロゾルと言うのは空中に長い間浮遊するので、我々のイメージとしては“煙”のようなもの。煙を周りに広げないためには、ついたてだけではだめで、窓を開けて空気を入れ替える、あるいは空気清浄機などを使ってエアロゾルを効果的に取り除く(ことが必要)」
Q.煙をイメージすると、むしろ、ついたては無い方が良いのでは?
「唾液にはエアロゾルの成分の他に、細胞を多く含む重い成分もある。下に落ちる成分に対してはついたてが有効に機能するので、ついたてが役に立たないというわけではない」
オミクロン株が主流となっている現在、引き続き「換気と密閉空間でのマスク着用が重要」だと髙田院長は指摘します。そんな中、政府は新型コロナの位置づけが「5類」になった場合、屋内でのマスク着用について、発熱などの症状がある人をのぞき、原則として不要とする案を検討しています。
「これは結局、屋内の状況によると思います。密でない状態であるならば、あえてマスクをしなくても、吐き出されたエアロゾルが速やかに排出される仕組みがあるのであれば、屋内でマスクをする必要はないと思います。政府などは『こういう場合にはマスクを』という具体的なイメージを皆さんに伝え…